1st Dance -終幕へ--EPILOGUE- プライベート・ワルツ 「ねぇ、涼。その『誘惑』って宝石、持っておくの?」 「ああ、宝石展の説明に書いてあったけど、これ『非売品』だってさ。本物だろうなんだろうな、きっと。でも、売るやつは贋物、売らないやつが本物なんじゃ、芸がないよな。」 笑いながら、涼は言う。 「そうだね。・・・桜さんも喜ぶよ、きっと。」 「・・・なあ、雪絵。」 突然まじめな声で、涼が話す。 「なぁに?」 当然かまえる雪絵。 「こんな時っていったら変だけど、こんな時じゃないと言えない気がするからさ。」 「何のこと?」 「少し、まじめな話さ。 雪絵がそばにいてくれたから、今まであの日から自分らしくやってこれたと思う。ありがとな。」 「どうしたの?何言ってるのよ。」 少し照れている雪絵。 「ずっと2人で一緒に生きていこう。永遠に笑いが絶えない明るいありのままの2人でいられるように・・・愛してる・・・好きだよ、雪絵。」 今までで一番真剣な表情を見せる涼。 「うれしい、ありがとう。 私も大好きだよ、涼。」 照れながらも、はっきりと答える雪絵。 「雪絵!」そう叫びながら涼は、雪絵を抱きしめた。 「でもさ、結局あまり変わらないんじゃないの?私たちって。」 「いいんだよ、それで・・・。」 笑顔の涼。 「で、これからも『怪盗チェリー』のほうも頑張ってね。」 (特に、神尾さんに捕まるなんて、許さないんだからね!!)心の中でつぶやく雪絵。 「はいはい、わかっているよ。 ・・・本当にかわんねぇかもな。」 笑顔の2人であった。 -ふたりだけの舞踏会は、まさに今始まったばかりであった・・・ Fin. - Another EPILOGUE - ミッドナイト・ワルツ 午前零時、今宵も予告どおりに怪盗は現れる。 黒のシルクハットにスーツ、赤のネクタイ、銀の眼鏡も相変わらず。 雲のない星空に浮かぶ銀色の満月が、摩天楼の上の怪盗を照らし出す。 今回も予告状に書いてある品物だけを盗んでいる。例外はあの時だけみたい。 華麗なその怪盗については『怪盗チェリー』と本人が名乗っている名前だけしかわかっていない。 なぜならまだ捕まっていないから。 でも私は、もうひとつだけ知っている。怪盗チェリーが、昔は女性で、今は男性ということを・・・。 -そして、今夜も現れる。 今夜こそは・・・今夜こそは、捕まえてみせるわ!! 絶対にね!!! 「やれやれ、まだあきらめていないのかよ。」 真理の姿に気づき、そうつぶやく。 ――― 少し、強い風が吹いてきた。 「では、頂きに参りますか。」 不適に笑い、怪盗チェリーは夜の街へ・・・ -真夜中の午前零時、予告状通りに現れては、盗んでいく『怪盗チェリー』 -そして、その怪盗を未だ捕まえようとあきらめない『高校生探偵』 -この『深夜の舞踏会』は、まだまだ終わりを見せようとはしない To be continued. ジャンル別一覧
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